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東京地方裁判所 昭和56年(ワ)5100号 判決 1985年12月25日

原告

有限会社ミートショップやましめ

右代表者代表取締役

相馬弘昭

右訴訟代理人弁護士

外池泰治

被告

株式会社古谷ミートチェーンストアー

右代表者代表取締役

古谷導治

被告

古谷導治

右両名訴訟代理人弁護士

奈良道博

被告

株式会社小山畜産

右代表者代表取締役

小山武

右訴訟代理人弁護士

真木光夫

主文

一  被告株式会社古谷ミートチェーンストアー及び被告古谷導治は、原告に対し、各自金六三七六万二四三三円及びこれに対する昭和五六年九月二一日から支払済みまで年一割の割合による金員を支払え。

二  被告株式会社小山畜産は、原告に対し、金二四〇〇万円及びこれに対する昭和五六年五月一六日から支払済みまで年一割の割合による金員を支払え。

三  原告の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、原告に生じた費用の三分の二と被告株式会社古谷ミートチェーンストアー及び被告古谷導治に生じた費用を右被告両名の負担とし、原告に生じた費用の九分の一と被告株式会社小山畜産に生じた費用の三分の一を同被告の負担とし、原告及び被告株式会社小山畜産に生じたその余の各費用を原告の負担とする。

五  この判決は、第一、二及び四項について仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告三名は、原告に対し、各自金六五八五万〇三七二円及びこれに対する本訴状送達の翌日から支払済みまで年一割の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁(被告三名)

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、昭和五五年一〇月一日、被告株式会社古谷ミートチェーンストアー(以下「被告古谷ミート」という。)との間で、原告の被告古谷ミートに対する食肉等の販売に関し遅延損害金を年一割とする継続的商品売買契約(以下「本件継続的売買契約」という。)を締結した。

2  原告は、被告古谷ミートに対し、右契約に基づき、前同日から昭和五六年三月一〇日までの間、食肉、同加工品を売り渡し、昭和五六年三月一〇日当時の売掛代金残債権は金七九二〇万二三七二円であつた。

3  被告古谷及び被告株式会社小山畜産(以下「被告小山畜産」という。)は、原告に対し、昭和五五年一〇月一日、被告古谷ミートが本件継続的売買契約に基づき原告に対し負担する債務について連帯して保証する旨約した。

なお、被告古谷の右連帯保証に関する自白の撤回には異議がある。

4  よつて、原告は、被告古谷ミートに対し、前記売掛代金七九二〇万二三七二円から弁済金一三三五万二〇〇〇円(被告古谷ミートが金五三五万二〇〇〇円弁済、佐々木拓男が金八〇〇万円を代位弁済)を控除した金六五八五万〇三七二円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年一割の割合による約定損害金の支払を求めるとともに、被告古谷及び被告小山畜産に対し、連帯保証債務の履行として右同額の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

(被告古谷ミート・被告古谷)

1 請求原因1の事実は否認する。

2 同2のうち、被告古谷ミートが原告から昭和五五年一〇月一日から昭和五六年三月一〇日までの間に食肉、同加工品を買い受けたことは認めるが、その余の事実は否認する。

(被告古谷)

3 被告古谷は、本件第三回口頭弁論期日において、陳述を擬制された答弁書により「請求原因3のうち、被告古谷が原告に対し昭和五五年一〇月一日被告古谷ミートが原告に対し負担する債務について連帯して保証する旨約したことは認めるが、その余の事実は否認する。」旨の認否をしたが、本件第七口頭弁論期日において、被告古谷は原告との間で右の連帯保証契約を締結するには至らなかつたと主張を変更した。

右の主張の変更は自白の撤回にはあたらない。

(被告小山畜産)

1 請求原因1、2の事実は争う。原告は、昭和五五年一二月二〇日、被告古谷ミートとの食肉等の取引を停止し、その後昭和五六年一月中旬から食肉等の取引をしているが、この取引は、笛田正彦及び被告古谷個人若しくは野中八郎らとの取引である。

2 同3の事実は否認する。被告小山畜産の代表者である小山武は、被告小山畜産を買主として原告と食肉等の取引をする意思はあつたが、原告の被告古谷ミートに対する食肉等の取引の連帯保証人となる意思はなく、甲第一号証は被告小山畜産の事務員平田春作が誤つて連帯保証人欄に被告小山畜産の記名押印をしたもので、小山武はその旨原告に連絡して原告の了承を得ている。

三  抗弁

(被告三名)

1 錯誤

被告らは、本件継続的売買契約並びに被告古谷及び被告小山畜産の原告に対する連帯保証契約(以下「本件保証契約」という。)について、真実は被告小山畜産が買主、被告古谷ミートが連帯保証人となる意思であつたのに、被告古谷ミートを買主、被告小山畜産を連帯保証人と誤つて表示したのであるから、被告らの意思表示には要素の錯誤がある。

2 合意解約

被告らは、昭和五五年一一月七日ころ、原告代表者に対し、右の誤記を理由に本件売買契約及び本件保証契約の破棄を申し入れたところ、原告代表者もこれを承諾した。

(被告小山畜産)

3 心裡留保

被告小山畜産代表者小山武は、本件保証契約に際し、真実は買主となる意思であり本件保証をする意思がなく、またこのことを知つていたが本件保証の意思表示をしたものであり、原告は、右小山の真意を知り、または知り得べき状態にあつた。

4 詐欺

(一) 原告の代理人被告古谷は、被告小山畜産に対し、本件保証契約に際し、原告と被告小山畜産との売買取引であるかのごとく装つてその旨被告小山畜産を誤信せしめて本件保証契約を締結させた。

(二) 被告小山畜産は、原告に対し、昭和六〇年四月一七日の本件第二九回口頭弁論期日において、右詐欺を理由に本件保証の意思表示を取消す旨の意思表示をした。

5 保証責任の範囲

被告小山畜産の本件保証責任は、次の事情からして大幅に制限されるべきである。

(一) 原告は、被告古谷ミートとの本件継続的売買契約上の取引限度額を当初金七〇〇万円とする意思であり、被告小山畜産が右限度額を金二〇〇〇万円とすることを申し出たことにより、原告と被告古谷ミートとの間で右限度額を金二〇〇〇万円とする本件継続的売買契約が締結された。

(二) 原告と被告小山畜産との本件保証契約において、「売主・買主間の取引額が前記限度額を超えた場合でも買主及び連帯保証人は異議なく全債務の履行の責を負う」と約定しているが、右限度額の約定は、全取引限度額について厳格に定められているから、右の全債務について連帯保証責任を負うとの約定は、信義誠実の原則に反し、かつ公序良俗に反するので無効である。

(三) 原告は、被告古谷ミートが店舗を持たない食品ブローカーであることを本件保証契約締結前から知つており、また被告古谷ミートの信用度・資力・営業状況を充分に把握しうる状況にあつた。

(四) 原告は、被告古谷ミートとの間で昭和五五年八月ころから取引を始め、当初は月額金二〇〇万円程度の取引でその支払も遅滞がちであつたのに、同年一〇月から一二月までに七六〇四万円余の食肉を販売し、同年一二月には支払遅延を理由に販売を一時中止しながら債権回収に特別の配慮をすることもなく更に金三〇〇〇万円弱の商品を被告古谷ミートに販売していた。

また、原告は、被告古谷ミートが購入した食肉をブローカー仲間にいわゆるバッタ売りをしていることを知りながら取引を継続していた。

(五) 被告小山畜産は、被告古谷ミートと原告間の取引について保証する必然性に乏しく、また原告代表者も被告小山畜産が被告古谷ミートの原告に対する債務を無制限に保証するはずがないことを知悉していた。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1ないし3、4(一)の事実は否認する。

2  抗弁5は争う。

被告小山畜産は、被告古谷ミートが昭和五六年一月中旬以降に原告から仕入れた食肉類をいわゆるバッタ売りをしていたことを原告より先に聞知しながら原告にその連絡をしていないもので、被告小山畜産についてその保証責任が合理的に制限されるとしても抗弁5(二)記載の全債務の履行責任の約定に照らし右制限額は小額に留まるべきである。

第三  証拠<省略>

理由

一本件継続的売買契約及び本件保証契約について

1  継続的売買契約書(甲第一号証)の作成の経緯

<証拠>によれば、次の事実を認めることができる。

(一)  原告は、食肉、同加工品の卸小売を業とする会社であり、昭和五五年七月三一日被告古谷ミートに対する食肉等の販売取引を始めたこと

(二)  被告古谷ミートは、原告から仕入れた食肉等を被告小山畜産、目魯畜産などに転売していたが、昭和五五年九月原告と被告古谷ミートとの取引量が増え始めたころから、原告代表者相馬弘昭は、被告古谷ミート代表者である被告古谷に取引契約書の作成方と転売先の被告小山畜産又は日魯畜産の保証を求め、売主欄に原告の記名押印をした継続的商品売買契約書(甲第一号証、乙第一号証、但し、同契約書前文の買主欄と日付欄、末尾の日付欄、買主及び連帯保証人欄はいずれも空白、第二条の取引元本限度額は「金七百万円」と記載されたもの)を被告古谷に交付したこと

(三)  被告古谷は、右継続的売買契約書の買主欄に被告古谷ミートの、連帯保証人欄に被告古谷のそれぞれ記名捺印をした上、被告小山畜産事務所に持参したところ、被告小山畜産の経理担当者平田春作が右契約書二通の連帯保証人欄に同被告の記名捺印をし、被告小山畜産の代表者小山武は右契約書第二条の取引限度額を「金二千万円」に訂正したこと

(四)  右小山武は買主を古谷ミート、連帯保証人を被告小山畜産とする右契約書二通を被告古谷に渡し、被告古谷は右契約書のうち一通(乙第一号証)を自らが保管し、他の一通(甲第一号証)を昭和五五年一〇月一日ころ原告に送付し、原告代表者相馬は、被告小山畜産代表者小山に保証の意思を電話で確認して右甲第一号証の前文の買主欄、日付欄及び末尾日付欄を補充したこと

以上の事実が認められる。被告小山畜産代表者本人の供述(第一回)中には「被告古谷から被告小山畜産が買主となつて原告と取引をしないかとの話があり、昭和五五年一一月中旬ころ被告古谷が継続的商品売買契約書(甲第一号証、乙第一号証)を持つてきたが、右契約書では買主が被告古谷ミート、連帯保証人が被告小山畜産となるので、被告古谷に無効である旨話して右のように押捺された右契約書を返した」との供述部分があり、また被告古谷本人の供述(第一、二回)中及び証人平田春作の証言中には被告小山畜産代表者本人の右供述部分に添う部分があるが、被告小山畜産において甲第一号証等に記名押印した時期に関する供述部分については前記甲第三号証、乙第三号証の「昭和五五年一〇月」ないし「一〇月頃」との記載、被告古谷本人尋問(第一回)の結果、原告代表者本人尋問(第一、二回)の結果及び弁論の全趣旨に照らして措信できないし、また被告小山畜産代表者らが供述するように、真実買主を被告小山畜産、連帯保証人を被告古谷ミートとする意思であつたならば、被告小山畜産代表者、被告古谷らにおいて、右継続的売買契約書にそれと異なる買主を被告古谷ミート、連帯保証人を被告小山畜産とする記名押印がなされていることに気付いていたのであり、また前認定のように右契約書第二条の取引限度額については訂正しているのであるから、直ちに右契約書の買主等の記載を明確に訂正ないし抹消すべき筋合であるのに、被告小山畜産代表者は右の訂正等をしないまま被告古谷に右契約書を交付したというものであつて、これらの事実と原告代表者本人尋問(第一、二回)の結果に照らし、被告小山畜産代表者らの前記供述部分は措信することができない。

2  請求原因1、3について

右に認定した事実及びこの事実と<証拠>によれば、原告が昭和五五年一〇月一日ころ被告古谷ミートとの間で原告の被告古谷ミートに対する食肉等の販売に関し遅延損害金を年一割とする本件継続的売買契約を締結したこと、被告古谷及び被告小山畜産が原告に対し同日ころ被告古谷ミートが本件継続的売買契約に基づき原告に対し負担する債務について連帯して保証する旨約したことが認められる。

3  抗弁1ないし4について

(一)  被告らの錯誤(抗弁1)、被告小山畜産の心裡留保(抗弁3)及び詐欺(抗弁4(一))の各主張については、いずれも被告小山畜産を買主、被告古谷ミートを連帯保証人とする意思であつたことをその前提とするものであり、この主張に添う証人平田春作の証言部分、被告小山畜産代表者本人の供述(第一回)部分、被告古谷本人の供述(第一、二回)部分は前記のとおり措信することができず、他に本件全証拠によるもこれを認めるに足りる証拠はない。

(二)  被告らの合意解約(抗弁2)の主張についても、右(一)と同様であり、また被告小山畜産代表者本人の供述(第一回)、被告古谷本人の供述(第一回)中には、それぞれ原告代表者に電話をして本件契約を破棄する旨の了承を得たとの供述部分があるが、右各供述は、前記認定事実及び原告代表者本人尋問(第一、二回)の結果に照らして措信できず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

二本件継続的売買契約に基づく取引について

1  被告古谷ミートが原告から昭和五五年一〇月一日から昭和五六年三月一〇日までの間に食肉、同加工品を買い受けたことは被告古谷ミート及び被告古谷との間では争いがなく、<証拠>によれば、原告は、本件継続的売買契約に基づき、被告古谷ミートに対し、別紙売上等一覧表記載のとおり昭和五五年一〇月二日から昭和五六年三月一〇日までの間、食肉、同加工品代金合計九七八一万一二七一円を売り渡し、昭和五六年三月一〇日当時の売掛代金残債権は金七七一一万四四三三円(右代金九七八一万一二七一円から、入金額合計三三七一万九〇〇四円から昭和五五年九月末日までの売掛代金残債権額一三〇二万二一六六円を差し引いた金二〇六九万六八三八円を控除したもの)であつたことが認められる。被告古谷本人の供述(第一、二回)中には、昭和五六年一月以降の原告との食肉等の取引は笛田正彦との間のものであるとの供述があるが、右供述部分は、<証拠>に照らし措信することができず、他に前記認定に反する証拠はない。

2  原告が被告古谷ミートから金五三五万二〇〇〇円の支払を、佐々木拓男から金八〇〇万円の代位弁済を受けたことは原告の自認するところであるから、原告の被告古谷ミートに対する請求は、前記売掛残代金七七一三万四四三三円から右弁済金を控除した金六三七八万二四三三円とこれに対する記録上明らかな本訴状が同被告に送達された日の翌日である昭和五六年九月二一日から支払済みまで年一割の割合による約定損害金の支払を求める限度において理由があり、また原告の被告古谷に対する保証債務履行請求も右限度において理由がある(同被告に対する本訴状送達の日の翌日が前同日であることは記録上明らかである。)。

三被告小山畜産の保証責任の範囲について

1  前記認定事実及び<証拠>によれば、次の事実を認めることができ、この認定を左右するに足りる証拠はない。

(一)  原告は、昭和五五年七月末に食肉等の取引を開始した被告古谷ミートに対し、同年七月同被告の転売先であることを確認した被告小山畜産又は日魯畜産に後記取引限度額を七〇〇万円とする保証を求めたところ、被告小山畜産は、被告古谷の依頼により連帯保証をすることになり、その際被告小山畜産の申出により右取引限度額が二〇〇〇万円に改定され、その後、原告は、被告小山畜産代表者に電話で保証意思の確認をした際、右取引限度額が二〇〇〇万円であることを確認したが、後記第九条についての話しはしなかつたこと

(二)  本件継続的売買契約及び連帯保証契約によると、本契約取引の元本限度額(契約上、本日までの原告被告古谷ミート間の取引により現在被告古谷ミートが原告に対し負担する債務並びに将来右当事者間の商取引による被告古谷ミートの負担債務その他本契約に関し原告の被告古谷ミートに対する貸付金、立替金並びに被告古谷ミートの負担する手形債務等の総額をいうとされている。)は右の経緯から二〇〇〇万円と定められたが、連帯保証等の範囲は、右限度額を超えた場合であつても連帯保証人は異議なく全債務履行の責を負う(契約条項第九条)旨約定されていること

(三)  被告古谷ミートは、被告古谷の経営する個人会社であり、食肉等のブローカーで銀行との当座取引もなく、原告は、被告古谷ミートの支払能力については昭和五五年九月ころから不安を感じ、被告小山畜産が連帯保証をした後の同年一一月ころにも被告古谷ミートに対し更に日魯畜産の連帯保証(被告小山畜産とほぼ同一の契約条項)を求めたが、日魯畜産からの保証は得られなかつたこと

(四)  食肉等の業者間の販売取引は、短期間に現金で決済されるのが通常の形態であつて、本件継続的売買契約においても、毎月一五日締切り、当月末日までに現金又は小切手で支払うとの約定があり、また被告古谷ミートが契約条項に違反したとき、被告古谷ミートの財産状態が悪化しまたそのおそれがあると認められる相当の事由があるときは、期限の利益を失うほか、原告は催告を要せず直ちに契約を解除できるものと定められていること

(五)  原告と被告古谷ミート間の取引は、別紙売上等一覧表記載のとおりであり、契約上の前記支払日、方法からすると昭和五五年一〇月末日において既に金二一五〇万円余の同年一一月末日において金二六四〇万円余の、同年一二月末日においては金六〇〇〇万円を超える売掛残代金があり、原告は、被告古谷ミートに対し、同月又は昭和五六年一月初めに一旦取引を中止したものの、被告古谷、被告古谷ミートの専務取締役と称する笛田正彦らの懇請により再び取引を開始して更に昭和五六年一月から三月まで約三〇〇〇万円の取引を続けていること、被告古谷ミートは、昭和五五年一二月に約三〇〇〇万円余相当の食肉等について取込詐欺の被害を受け、昭和五六年に仕入れた食肉等についても相当部分が被告古谷の関知しないところで転売されていること、また原告は、被告小山畜産代表者に対し、前記電話連絡をしたほかは被告古谷ミートとの取引期間中に同被告との取引状況について何らの事情説明をしていないこと

以上の事実が認められる。

2 右認定事実によると、原告及び被告小山畜産は、被告小山畜産の原告に対する連帯保証の範囲として、前記第九条の条項よりむしろ元本限度額である金二〇〇〇万円を重視してこれを一応の基準とする意思であつたことが窺えるほか、原告は、被告古谷ミートの資力、信用ないし食肉等の販売業界の取引慣行からは異常というほかない多額の繰越残代金債権を生じていること、これらの事情と前記認定諸事実に鑑みると、前記第九条の契約条項が信義則ないし公序良俗に違反するものとは解することはできないが、被告小山畜産の保証責任の範囲は、信義則上、被告古谷ミートの負担する債務のうち金二〇〇〇万円とその二割に相当する金四〇〇万円、以上合計金二四〇〇万円とこれに対する約定の年一割の割合による遅延損害金(被告小山畜産に対する本訴状の送達の翌日が昭和五六年五月一六日であることは記録上明らかである。)を限度とするものと認めることが相当である。

四以上の次第であるから、原告の被告古谷ミート及び被告古谷に対する請求は、金六三七六万二四三三円及びこれに対する昭和五六年九月二一日から支払済みまで年一割の割合による金員、被告小山畜産に対する請求は、金二四〇〇万円及びこれに対する本訴状送達の翌日である昭和五六年五月一六日から支払済みまで年一割の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九二条、九三条を仮執行宣言について同法一九六条一項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官下田文男)

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